長いプロ野球シーズン、観戦していると「どうしても落とせない」「何としても勝ちたい」という試合展開を感じることがありますよね。
延長戦、上位チームとのゲーム差、連敗中。
特にポストシーズンともなると、ベンチ入り選手総動員で代打、代走を送り執念の采配を見ることがあります。
ただし、勝利への執念を見せるあまり、思いのほか野手を使い切ってしまい、「守れる野手がいない」という事態を招くこともあります。
今回は、千葉ロッテマリーンズにおいて、本職ポジションの野手が不在という大ピンチを、どのような采配でその試合を乗り切ったのかをお伝えします。
プレーオフ最終戦でシーズン1度も守ったことのないセカンドについた今江敏晃
2002年〜2015年までロッテでプレーしていた今江敏晃。
参考:NPB公式
https://npb.jp/bis/players/01305115.html
サードとして長年ロッテを支えていた今江ですが、リーグ優勝がかかった2005年プレーオフ最終戦で、レギュラーシーズン1度も経験がないセカンドを守ったことがあります。
2005年プレーオフ2ndステージ第5戦、福岡ソフトバンクホークスと千葉ロッテマリーンズとの試合。
勝てば優勝の最終決戦での一幕です。
スタメン出場していたセカンド・堀幸一が、試合途中に足を負傷。
代わり早坂圭介が途中出場しセカンドの守備に。
1-2のソフトバンクリードで迎えた7回裏、ロッテは2アウト2塁のピンチを背負います。
ピッチャーは左のセットアッパー藤田宗一、バッターはソフトバンクのリードオフマン、川崎宗則。
打った打球は1,2塁間抜けようかという強烈な打球。
しかし、早坂がダイビングキャッチのスーパーセーブをみせ、セカンドゴロに。
追加点が与えられたら試合を決定づけられたであろうピンチを、見事早坂の攻守で切り抜けます。
直後の8回表、ロッテの攻撃はその早坂からの打順。
ファインプレーの勢いそのまま打席に向かうかと思いきや、なんとここでボビー・バレンタイン監督は代打の切り札・シーズン引退を決めている初芝清を送り込む采配をみせます。
初芝はサード内野安打を放ち、次打者福浦和也がライト前ヒットでチャンス拡大。そして里崎智也が守護神・馬原孝浩からレフトフェンス直撃の逆転タイムリーツーベースを放ちます。
結果として早坂の代打・初芝は成功となりましたが、問題は8回裏以降の守備。
この時点で残っていた野手は捕手・辻俊哉のみ。
控えの内野手はすでに使い切ってしまい、セカンドを守れる選手が誰もいなくなってしまったのです。
「誰がセカンドを守るの?」「まさかセカンド初芝?」
当時のロッテファンはそんな疑問が生じたのではないでしょうか?
結果として、サードは初芝がそのままサードのポジションに、そしてセカンドは2005年レギュラーシーズン一度もセカンド守備についたことがない今江を配置させる形となりました。
これも「ボビー・マジック」といわれたバレンタイン監督の名采配の一つのエピソードです。
当の今江は無難にセカンドの守備をこなし、見事勝利を3-2で勝利をおさめています。
まさに勝利への執念の采配ですね。
参考:2https://npb.jp/bis/2005/games/s2005101701641.html
とはいえ、シーズン中一度もセカンド守備につかせたことのない選手を、優勝のかかったプレーオフ最終戦にて守らせるとは、致し方ないとはいえ勇気のいる采配でしょう。
今江自身も、サードを主戦場としていたことから、シーズン中も練習はしていなかったことと思います。
選手への信頼とその期待に応える選手、いくらプロとはいえ、信頼関係がなければ成し得ないことだと感嘆するばかりです。
ちなみに今江はこの試合以降、現役を引退するまでセカンドの守備につくことは一度もありませんでした。
セカンドの守備についたことのある田村龍弘
こちらも長年ロッテのキャッチャーとして活躍している田村。
実は田村も、レギュラーシーズン1度だけセカンドの守備についたことがあるのです。
2014年7月15日、ロッテVSソフトバンクの試合。
2-3ビハインドの場面で迎えた9回裏チャンスの場面で、7番ショート・クルーズに代わり代打・福浦和也。
代打策がはまり、見事同点に追いつくタイムリーヒットを放ちます。
しかし、サヨナラ勝ちには至らず、9回裏で決着がつかず延長戦へ。
この時点で内野を守れる野手がベンチにいなくなり、誰が守るかという事態に陥ります。
結果として、セカンドを守っていた鈴木大地がショートへ、そして空いたセカンドには、なんとキャッチャーの田村が守ることとなります。
12回表、先頭・松中信彦の1、2塁間の強烈な当たりを、腕いっぱい伸ばし好捕。そしてファーストへ見事な送球をみせアウトにしました。
見事なフィールディングに、場内は田村コールに包まれます。
試合はそのまま3-3の引き分けでしたが、回の先頭松中の打球がヒットになっていれば、試合展開は変わっていたかもしれませんね。
(余談ですが、当時キャッチャー川本良平、ファースト金澤岳、セカンド田村というキャッチャー登録3人が守備陣につくという異例の事態となりました。)
参考:https://npb.jp/bis/2014/games/s2014071501109.html
田村自身は「高校時代に内野はやっていたので、自然に体が動きました。監督ができるかと言うので、行けますと答えました。チャンスがあればどこでもいいと思っていましたから」と語られていたとおり、高卒2年目ともなると貪欲に出場機会を求めていたことがわかりますね。
参考:https://www.nikkansports.com/baseball/news/f-bb-tp0-20140715-1335215.html
代走で起用された小林宏之
守備ではありませんが、できるだけ1点をもぎ取りたいという執念から、投手の小林宏之を代走に送り込んだこともあります。
2009年6月2日、ロッテVS巨人の試合。
0-0のまま迎えた延長12回裏、ツーアウトから大松がヒットで出塁し、打者は今江に変わる代打、助っ人外国人のゲイリー・バーナムJr.。
長打が出ればあわよくばサヨナラ勝ちとなるシチュエーションです。
大松はお世辞にも足が速いとは言い難く、なるべく1塁ランナーは足の速い選手が望ましい。
そんな場面でもバレンタイン監督は執念の采配を見せます。
大松に代えて、先発ローテーションピッチャーでベンチ入りしていた小林宏を代走に送り込みます。
小林宏之は身体能力抜群で、50m5.9秒の足の速さを持っており、長打が出れば一気にホームを狙えると考えての采配だと思います。
しかし、スライディングやブロックなどで怪我をするというリスクも大いにあり得たと思います。
結果はバーナムJr.が凡退してゲームセットとなりましたが、なりふり構わず巨人に勝ちたいという執念を、ロッテファン全員が感じた采配でした。
参考:https://npb.jp/bis/2009/games/s2009060200691.html
まとめ
千葉ロッテマリーンズにおける本職以外のポジションをこなした選手を紹介してきました。
勝利への執念を見せるあまり、チームとして多少無理のある采配も必要であることがわかったと思います。
もしあなたが会社員だったとして、普段勤めているポジションから、人手不足を補うため別のポジションの仕事をしてくれと会社の上司から突然頼まれたとしたら、すぐに対応できるでしょうか?
私であれば、いくら会社のピンチと言えども対応するには難しく、むしろ断ってしまうかもしれません。
しかし、プロ野球選手の場合は、首脳陣からの指示に素直に従い、むしろチャンスと思ってポジションについている心境がわかります。
ましてや大事な負けられない試合で、普段練習していないポジションに置かれるわけですから、相当な負担やプレッシャーがあるはずです。
それにもかかわらず不慣れなポジションを見事にやってのける、さすがプロ野球選手ですね。
これからも勝利のために、時には珍しい采配が見れる試合もあるかもしれませんが、その時はチームとしての意気込み、選手の生き様を感じれる場面です。
勝ちに結びつけられるよう、ファンとしても大きな声援で後押ししていきたいですね。
また執念の采配が振るわれた場合、記事に残していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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